長崎県長崎市を流れる中島川は、江戸時代の鎖国下にあった日本では
海外からの交易品を流通させる運河として機能していました。
中島川には木橋が架かっていたのですが、
当時は洪水が多く、橋は容易に流されてしまって
復旧や建て替えの度に人々の暮らしに影響が出ていたようです。
この状況を見かねた、黙子如定(もくすにょじょう)という中国の僧侶が、
大陸伝来の架橋技術を駆使して、水害に負けない石橋を造ろうとしました。
長崎の眼鏡橋は、こうした時代からの要求と技術との巡り合いの中で生まれた
日本最古の石造アーチ橋です。
眼鏡橋の特徴とも言える真ん中の橋脚は、
橋の反りを抑えるためにあえてそのように
設計にしたと言われています。
太鼓橋のように丸く反った橋より、
なるべく平らな橋の方が使いやすい。
しかし一つのアーチで平らな橋を造るのは難しく、
ならば二つのアーチで橋を造ろうか。
そのような経緯があったのです。
かえって複雑な設計をしなくてはいけなくなりましたが、
人々の日常生活を支える橋を使いやすいものにしたいという情熱的な追求が、
誰もが知るあの愛らしいかたちに現れることとなりました。

眼鏡橋:http://www.city.nagasaki.lg.jp/shimin/190001/192001/p000713.html
文・写真:木内健吾