私たちを取り巻く環境は、人間が都合よく紐づけた色んな根っこが重く重なってできているように見えます。
社会も、都市も、地域も、家族も、自分自身も。
そして、いろんなものに根ざしたケンチクを媒介にして、
私たちは安心してこの世界に住みつくことができるはずです。
でも一方で私たちは、ここではないどこかへの憧れやどこにも根ざさないことへの誘惑を断つことができそうにありません。
私たちが「旅」を欲し、住みつくことから逃げついた先にある風景は、社会も、都市も、
地域も、家族も、自分自身をも、全ての根っこを脱ぎ捨てた姿。
そんな姿にどうしても出会いたくて、私たちは「南」へと向かうのです。
「光り輝く島」という別名をもつスリランカ。
そこで見る風景は、自然も建築も動物も人たちも、
すべての万物が混沌と、そして優しく共存する姿でした。
瑞々しい緑も、乾いた土ぼこりも、夕日を横切る鳥たちの群れも、陽に輝く蒼い水辺も、
道路を横切る孤独な像も、いたずらを待つおどけたサルたちも、
たわわに実った果実の甘い匂いも、そして奥深いジャングルの闇も。
それは、あらゆるものに根ざしすぎた都市の「日常」では
決して出会わないであろう生の「地球」の姿。
それを最も強く、美しく経験するために、そのホテル、
ヘリタンス・カンダラマの全ては整えられているようです。
ケンチクを媒介として、この世界は「地球」と地続きになっていくのです。



ヘリタンスカンダラマ
11, Dambulla, Dambulla 21106 スリランカ
文・写真:藤岡 大学